【2010年 第10回 預金保険制度のおさらい】 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
9月10日、日本振興銀行がペイオフ発動。
他行では1%台の貸出金利も珍しくない今、高いもので2%の預金金利では経営も維持できなくなるのは当然かもしれない。
はからずも日本振興銀行が日本のペイオフ第1号となってしまいました。
ここで預金保険制度のおさらいをしておきましょう。
次の表をご覧ください。
①決済用預金は全額保護
②有利息の普通預金(低金利で無利息同然とはいってもゼロでない限りは決済用預金とはみなされません)、定期預金などは元本1,000万円とその利息は保護されます。
それを超える部分は一部カットされることがあります。
もっともペイオフ発動となればその金融機関は債務超過のはずで、当然カットされるのは間違いないでしょう。
③外貨預金などその他の預金は預金保険の対象ではなく、1円からカットの対象になります。
④破たん金融機関で購入した投資信託や保険は、預金保険の対象ではありませんが、原則として破たんの影響を受ける事は有りません。
以上が預金保険で保護される預金とされない預金の区別です。ここで注意しておきたいのが架空名義預金と他人名義預金です。
架空名義預金と他人名義預金は預金の種類に関わらず預金保険による保護は一切ない。
あなたが麻薬やテロ組織に関わっていない限り架空名義預金について心配する必要はないでしょう。
実際、架空名義預金を作成するためにはそれ相当の知識と書類偽造の技術が必要です。
一般人には縁遠いものでしょう。
注意しておきたいのが他人名義預金です。
ここで他人名義とは、本来自分の資産であるべきお金を何らかの事情で自分以外の名義の預金にしておくことです。
他人とは自分以外の人間を指し、たとえ親子であっても他人とみなされます。
もちろん正式に贈与を行えば、例えば親から子への贈与手続きを行えば、資産は子のものとなり他人名義預金委には該当しません。
しかし
①贈与税の対象になるにもかかわらず贈与税を支払っていない。
②通帳を親が管理し親の印鑑を使用している。
③資産を移した経緯に合理的な根拠がない。
④通常の生活上での家族間の資産の移転の範囲を逸脱している。
などの条件の一つにでも該当すれば他人名義預金とみなされて預金保険による保護を受けれなくなる恐れがあります。
さらに困ったことは、他人名義預金は概算払いの対象からも外れる、ということです。
概算払いとは破綻金融機関の最終的な整理が終了する前に、おおよその債務超過額を推定し、「これくらいは払えるだろう」ということで、概算でのカット率で早期に支払いを受ける制度です。
概算払いの対象外となると、支払いが受けられるのは破綻金融機関の債務を最終的に清算するとき。
ペイオフ発動から最低1年以上経過してからになると思われます。1年とは最短の目安と考えてください。
他人名義預金は金融機関が破綻した場合。一部がカットされるうえに、支払いまで長い時間を要します。
たとえ金融機関が破綻しなくとも、他人名義預金は相続の際の争いのもと。
さらに名義人が悪意であれば、通帳と印鑑を紛失したことにして勝手に預金を引き出すことも。名義人本人が請求するので本人確認は正当になされます。
真の預金者が金融機関にクレームをつけたところで、それはあくまでも真の預金者と名義人の間で処理するもの。
どうにかして名義人からお金を回収するしかありません。
回収できなければその預金は100%カットとなります。
家計内の通常のお金のやり取りではない、安易な他人名義預金は慎むべきです。
それが正当な贈与でかつ贈与税の課税対象であれば、きちんと贈与税を申告してください。
この記事へのコメントはありません。