【2015年 第4回 我が藩に8万貫の大敵あり】
吉田松陰の言葉からから考えるライフプラン
上津原 章 ⇒プロフィール
こんにちは。山口県のファイナンシャルプランナー、上津原と申します。
皆さんは、家計がピンチになったとき、どのようにして切り抜けておられますか。たいていの方が支出を削ろうとされるのではないでしょうか。とはいうものの、支出を削るだけの改善策は、なかなか長続きしないものです。
さて、吉田松陰先生の言葉から考えるライフプランコラムですが、今回は吉田松陰先生にも多大なる影響を与えたといわれる、村田清風氏について取り上げたいと思います。
村田清風氏について
村田清風氏は、19世紀の中頃に長州藩(現在の山口県)の財政を立て直された方です。山口県では小学校社会科の授業で必ず名前が出てきます。
さて、冒頭の言葉ですが、村田清風氏が藩の実権を握って財政改革を行っていた天保11年(1840年)7月の「流弊改正意見」からとったものです。
<原文(一部抜粋)>
今月今日より清廉の身固め仕(つかまつ)り、正心誠意を以て、御借銀八萬貫目、これを除く大敵御退治御手伝い仕る可(べ)く候。しかし当節の大敵一旦御挫(くじ)き御座候共、量入為出の法を以て平生臨時の御規格相立ち申さず候ては、又々八萬貫目の大敵幾返りとなく出来仕る可く候。
<筆者意訳>
本日より質素倹約に努め、心から(長州藩にある)8万貫目の借金という大敵を退治するお手伝いをさせていただきます。しかしこのたびの大敵の退治に一度失敗してしまうと、収入を正しく計り理由なき支出をなくすために普段と不意の支出の決まりごとをつくらなくては、8万貫目の借金という大敵は幾度となくやってくるでしょう。
長州藩には、当時8万5千貫余りの借金があったといわれています。財政改革を戦に見立て、具体的な数字をあげて危機感を植え付けています。戦に敗北するということは死をも意味しますので、村田清風も死ぬ気で取り組んだのでしょう。
(参考:8万5千貫=現在の価値でおよそ223億円。銀1g=70円として)
質素な生活を奨励して新しい借金をしないように武士を戒めるとともに、明倫館の拡張工事や越荷方(卸売業・倉庫業・貸金業を兼ねたようなもの)の創設など、教育や新しい産業については積極的に奨励したのでした。
改革にあたっては様々な抵抗があり、倹約令については毛利敬親(たかちか)公の奥方等から反対されています。改革が思い切ったものであったため、村田清風は数年後反対派の圧力によって左遷されています。それでも、村田清風の考えは後継者である周布政之助にも受け継がれ、やがて財政改革は成功をおさめます。弘化3年(1849年)には借金はほぼなくなったといわれています。このことなしには、長州藩は明治維新の立役者になることはできなかったのです。
<この言葉から学ぶライフプラン>
家計の見直しは、ファイナンシャルプランナーが受ける相談の中でも最も多い項目の一つです。どの支出を見直すか、どのように家計管理を行うか。そして、ご家族の協力してもらうためどうするか。といったように、家計管理の悩みは尽きません。
ただ、今まで多くの相談をお受けする中で、一人で家計を管理しておられる方は、精密に管理していてもなかなか成果が出ないように感じます。なぜなら、他のご家族の方が家計の現状が分からず、問題を共有できないからです。
家計の見直しにあたっては、先ほどの村田清風の言葉のように、わかりやすい目標を設定し、目標に向けての達成イメージを描くこともすごく大事です。
「毎月10万円ずつ貯蓄する!」
「3年ごとに、100万円住宅ローンの繰り上げ返済をする!」
といった目標でもよいのですが、
「二人の子どもを奨学金や教育ローンに一切頼らずに大学まで卒業させる!」
「結婚25周年の時に家族でもう一度新婚旅行に行く!」
といった方がご家族も協力しやすいのではないでしょうか。
4月は新年度の初めであり、将来のことを考えるのにちょうどよい時期です。お金の課題もご家族で一緒に考えて、解決するようにしたいですね。
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