【2013年 第7回】NISAとゴルフ会員権、税制改正でココが変わる!最新ニュース解説。FPとして言わせていただくと…
菱田 雅生
先日、平成26年度の税制改正大綱が公表されました。正式決定は国会の通過を待たなければなりませんが、例年どおりであれば、大きな修正はなく、3月ごろには国会を通過して正式決定となるでしょう。
今回の改正で個人的に大きな変更だと思ったものは、年明けから制度が始まったばかりのNISA(少額投資非課税制度)についての制度変更や、ゴルフ会員権を売却した際の譲渡損失の取り扱いについての変更です。
ここでは、それぞれの変更についてポイントをまとめたいと思います。
NISAの制度変更とゴルフ会員権の譲渡損失
個人的に平成26年度の税制改正大綱で注目したのは、NISAの制度変更とゴルフ会員権の譲渡損失についての取り扱いの変更です。
まず、NISAの制度変更はどんな変更かというと、毎年異なる金融機関でNISA口座を開設できるようになるという変更です。当初、NISA口座は、開設から4年間は金融機関の変更ができませんでした。
これを平成27年からは、毎年NISA口座を変更することが可能になり、同時に複数の金融機関でNISA口座を持つことができるようになるようです。
NISA口座を開設できるのは1年間に1つの金融機関に限定されますが、4年間変更できない現行の制度よりは利便性が高まると言えるでしょう。
例えば、平成26年はA銀行でNISA口座を作って株式投資信託を100万円分購入し、平成27年はB証券会社で上場株式を100万円分購入することが可能になるということです。
いずれも、購入年から起算して5年間(ロールオーバーをすれば10年間)は非課税で運用することができるわけです。
金融機関側からすると、一度NISA口座を利用する顧客を獲得してしまえば4年間は囲い込めると目論んでいたものが、いきなり制度開始2年目の平成27年から毎年変更が可能になってしまうので、NISA口座の獲得で安心している場合ではない状況になったといえるでしょう。
これは、私たち利用者側にとっては、常に金融機関を比較検討できるようになるわけなので、歓迎できる改正だと思われます。
そして、もうひとつのゴルフ会員権の譲渡損失についての取り扱いの変更は、ひとことで言うと、他の所得から差し引く「損益通算」ができなくなるという変更です。
これまでは、ゴルフ会員権を売って損失が発生した場合、その損失を他の所得から差し引く「損益通算」が可能でした。例えば、ゴルフ会員権で300万円の損失が発生したら、給与所得などから300万円を差し引くことができるので、その分の給与所得から差し引かれていた税金を取り戻すことができたのです。
もともと税法上は、「生活に通常必要でない資産」(別荘、書画、骨董など)を売却することで発生した損失は、損益通算の対象外となっていましたが、ゴルフ会員権やレジャー会員権などは例外として損益通算が可能だったのです。
どうやら、その昔、この規定ができた時代にはゴルフ会員権などが存在していなかったので、税法の想定の範囲外だったことが主な原因のようです。
とはいえ、世間一般のサラリーマン世帯などのような平均的な所得水準の人の感覚からすると、ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」に含まれていないということには違和感をおぼえるのではないでしょうか。
筆者も、何年も前から、ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」に入ってないということは、課税当局がゴルフ会員権は生活に通常必要だと言っているようなものだと思っていましたので、ゴルフ会員権が生活に通常必要でない資産に加わるという今回の改正は、「満を持して」というよりも、「遅れ馳せながら」という表現のほうが合っている気がします。
ちなみに、現在、評価損をかかえたゴルフ会員権を持っていて、そろそろ売ろうかと思っていた人は、今回の改正の適用は、「平成26年4月1日以後に行う資産の譲渡等について」となっていますので、3月末までの売却なら、まだ他の所得から差し引く損益通算が可能です。検討中の人は、少し急いだほうがいいかもしれません。
というのも、3月末に向けて、ゴルフ会員権の売却希望者が殺到する可能性も否定できないからです。
最近は、ゴルフ会員権を投資目的で買っている人は比較的少ないと思われますが、ゴルフをやるために会員権を持つのではなく、投資の一環として会員権を保有している人にとっては、損益通算ができなくなってしまう今回の改正は、評価損を抱えたまま保有し続けるメリットがなくなってしまうと考える人がいてもおかしくはないでしょう。これから3月末までのゴルフ会員権相場は、ちょっと注目です。
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