【2013年 第1回「個人向け国債」って、手数料高くない?】
最新ニュース解説。FPとして言わせていただくと…
菱田 雅生 ⇒ プロフィール
今年は5年ぶりに物価連動国債の発行が再開されたり、個人向け国債(変動10年、固定5年)が毎月発行になったり、国債発行計画についての変更が予定されています。
今回は、意外と知られていない国債の手数料について考えてみたいと思います。
●物価連動国債の5年ぶりの発行再開へ
平成25年10月から、物価連動国債が5年ぶりに発行を再開するようです。どうやら、新しい物価連動国債は、過去発行されたものにはなかった償還(満期)時の元本保証(フロア)が設定されるようです。
そもそも物価連動国債は、消費者物価指数に連動して元本部分が変動するようになっている商品ですので、物価が上昇すれば元本が増加し、物価が下落すれば元本が減少する仕組みになっています。仮に、発行時に比べて満期時の物価が下がっていたとしたら、額面金額(元本)が減って満期を迎えることになるわけです。それを今年から発行される新しい物価連動国債は、満期時のみではありますが、元本保証を約束するようにしたのです。
元本保証ができたことによって、どの程度新たな投資家が増えるのかはわかりませんが、インフレに備えられる国債としては魅力的であることは間違いないでしょう。ただし、物価連動国債は、原則として機関投資家向けなので、私たち個人が直接購入することはできません。私たち個人の利用法としては、物価連動国債で運用している投資信託などで間接的に買うことになります。
●個人向け国債(5年・10年)毎月発行へ
また、平成25年12月募集分から、個人向け国債の「変動10年」
と「固定5年」が、「固定3年」と同様に、毎月発行になるようです。個人向け国債の売れ行きは、最近、伸び悩んでいるというより、ジリジリと落ち込んできているといえるでしょうが、毎月発行にすることで、いつでも買える環境を作っておくといった感じでしょうか。
1万円から買える個人向け国債が毎月発行されるということは、毎月積み立てで買っていくこともでき
るようになるわけですから、それなりにメリットはあるかもしれません。特に、変動10年は、数少ない
変動金利の国債です。今後の金利上昇の可能性を考えると、変動10年を毎月積み立てで買えるのは、そ
れなりに魅力的です。
●手数料を考えると新窓販国債のほうが…
しかし、細かい話ではありますが、個人向け国債については、販売した金融機関に国から支払われている手数料がちょっと高いように感じています。国が販売金融機関に支払っている手数料は、変動10年と固定5年が販売額の0.5%、固定3年が販売額の0.4%です。6月に募集された変動10年の適用利率は0.57%(税引後0.4542045%)、固定5年は0.30%(同0.2390550%)、固定3年は0.14%(同0.1115590%)という数字を見ても、投資家が受け取る1年分の利息額(手取額)よりも手数料のほうが高いことがわかります。
もちろん、金融機関が儲けることも大切です。ただ、金融機関のホームページなどに、個人向け国債は「購入時の手数料はかかりません」などと書いてあると、国が支払っている手数料は、当然に国民が負担しているようなものなので、かからないわけではないと思ってしまいます。せめて、手数料よりも1年分の利息のほうが多い状態であれば、とも思ってしまいます。
したがって、手数料だけ比較すると、新窓販国債として中小の金融機関等の窓口でも販売されている普通の国債(2年、5年、10年)のほうが安くなっている(2年が0.1%、5年が0.15%、10年が0.2%の手数料)ので、額面5万円単位ではありますが、同じ国債を保有するなら新窓販国債も検討に加えるべきでしょう。
投資信託の手数料や、保険商品の内部で差し引かれている実質的な手数料、その他、一般の商品における業者の粗利益などを考えると、この国債の手数料などは非常に小さなものではありますが、実質的なコスト負担を知ることはとても重要なことですので、どんな商品についても調べみようとするスタンスが大切でしょう。
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